Part4 慢性砒素中毒症

土呂久が教える慢性砒素中毒

 堀田宣之医師は土呂久の裁判や行政不服で、長年の検診にもとづいて「土呂久地区住民は、長期にわたって空気、水、食物から曝露されつづけ、きわめて深刻で多彩な健康被害を受けた」と証言した。堀田医師の論文「土呂久鉱毒病(慢性砒素中毒症)の臨床的研究」(1979年)に、土呂久地区に高頻度でみられた慢性砒素中毒の症状が列記されている。

  • 神経系 : 嗅覚障害、難聴、求心性視野狭窄、視力障害、多発性神経炎、自律神経症状(特にレイノー症状)、中枢神経障害
  • 粘膜系 : 結膜炎、角膜炎、鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、気管支喘息様症状、胃腸炎、歯の障害
  • 心・循環器障害 : 高血圧、脳循環障害
  • 皮膚 : 色素沈着・色素脱失・異常角化症
  • その他 : 肝障害、腎障害、貧血

 堀田医師はその後、世界の砒素汚染地を訪ねて患者を診断し、その蓄積をもとに、砒素に曝露して数カ月から数年ないし数十年後に現れる症状を、共著「目で見る砒素中毒」(2010年)の序でこう整理している。

  1. 初期症状 (皮膚粘膜刺激症状): 鼻炎、結膜炎、胃腸炎、上気道炎、気管支炎
  2. 中間期症状 : 色素沈着・白斑・角化症、末梢神経症状、レイノー現象、肝臓障害、腎臓障害、貧血
  3. 遅発性症状 : 全身の中小動脈硬化症障害、悪性新生物(皮膚癌、肺癌、尿路系悪性腫瘍、肝臓癌など)

タイで砒素中毒患者を診察する堀田医師