Part4 慢性砒素中毒症

一番恐ろしいがんの病気

 「私達は呼吸器、消化器、循環器、泌尿器、神経、目、耳、鼻とありとあらゆる病状に苦しめられています。中でも一番恐ろしいのが、癌の病気です。原告の中でも、健蔵さん、秀男さん、ハルエさん、仲治さん、クミさん、みんな癌に蝕まれて命を奪われてしまいました。原告団長をしていた、私の義理の兄の数夫も去年の8月、喉頭癌で死んでいきました。癌の苦しみは、これはもう、この世の地獄です。痛みが始まると、「病院の窓から飛び降りて死んでしまいたい」とおらぶのを、そばにいる者はどうしてやる事もできずに、はがゆい思いでおろおろするばかりなのです。癌に効く薬はありませんので、まるで蛇の生ま殺しみたいな、むごたらしい最後でした。数夫は「どれだけお世話になったか知れん支援の人達に、何の恩返しもできないのが残念だ」と言い残してこの世を去っていきました。国のため、村の繁栄のためといって、一人一人の個人を犠牲にしてよいものでしょうか……。私達のような鉱毒に蝕まれた体は、今日のような医学の進歩した時代でもどうすることもできません。残念ながら、鉱毒をあの世まで引きずって行くほかありません」
(一審結審のときの佐藤ミキさんの意見陳述より)

肺がんで亡くなる患者がつづいた