Part4 慢性砒素中毒症

がん死亡者の増加

 1980年頃、土呂久の被害者ががんにかかって死んでいくケースが目立った。一陣訴訟が結審した1983年2月時点で、原告患者23人のうち12人が死亡し、その半数の6人の死因ががんだった。守る会は1981年9月「土呂久鉱毒と癌」という報告を作成し、聞取り調査で把握した13人のがん死亡者を一覧表で示した。13人中9人が肺がんで死んでいた。土呂久鉱山が閉山して16年たった1978年から、がん患者が急増していることもわかった。長い潜伏期を経てがんが発生することを示していた。
 砒素は古くから、皮膚、肺、肝臓、腎臓、泌尿器などにがんを引き起こす物質として知られてきた。世界の研究者によって、数多くの動物実験がおこなわれたが、砒素によってがんを発生させたという報告はない。そのため砒素は、がんのイニシエーターではなくてプロモーターだと考えられるようになった。最近の研究では、人の体内で無機砒素から有機砒素に変わるときにできる中間体が、人の遺伝子を損傷することがわかってきた。
 砒素中毒患者にがんが多発しているのは明らかであり、がん対策として、早期発見のための健診の充実がのぞまれる。