Part4 慢性砒素中毒症

画期的な判断方法

 公害健康被害補償不服審査会は1980年5月19日、請求人4人の「棄却処分を取り消す」という“逆転認定”の裁決をだした。裁決書は、総論の部分で被害者側の主張を8割方取り入れて、砒素によって起こる非特異的症状を総合して判断するという画期的な方法を提示した。
 「当審査会は判断にあたっては、暴露歴、暴露状況を前提とし、暴露状況によっては既往に急性、亜急性の症状を呈することがあり得るので、症状の経過についても充分に考慮を払い、まず皮膚所見について砒素による疑いの有無を検討し、次いで多発性神経炎をはじめ慢性砒素中毒に見られ得る他の非特異症状についてもそれが他の原因によるものかどうかを検討し、これらの所見を総合して判断すべきものと考える」
 公害行政のお目付け機関が、砒素中毒の診断にあたっては、皮膚所見だけでなく全身の非特異的症状も重視すべきだとしたのである。

勝利の裁決を喜ぶ被害者

被害者と会見する環境保健部長(左)