Part4 慢性砒素中毒症

皮膚以外は因果関係不明

 宮崎県は1972年2月、一次健診と二次健診の結果を踏まえて、熊本大学病院と宮崎県立延岡病院に合わせて8人の患者の精密検査を依頼した。熊本大学病院長から宮崎県に提出された「土呂久地区の健康調査報告」は、それぞれの患者の症状について次のように結論づけていた。
 「皮膚所見(良性角化症・色素斑・脱色素斑)より慢性砒素中毒症と思われる。右上肺野の結節性陰影・全歯脱落・変形性腰椎症・感音系難聴・視力・視野障害・左水腎症と砒素等との関係は現時点では学問的に不明である」
 この報告は、患者の全身にみられた症状のうち皮膚症状だけを砒素に起因していると認め、他の症状との関係を「現時点では学問的に不明」とした。
 ここから、土呂久に発生した砒素中毒は皮膚症状に限られるという誤った認識が定着していった。

皮膚の色素異常(右)と角化