Part3 人権回復の願い

我が魂の叫びなり

 時に触れ折に触れして、三十一文字に託して詠む歌は、うたには非ず、苦しみに耐え抜く我が魂の叫びなり。昨日も今日も又明日も、萎えし右手にくくりつけ、命の限り叫びます。命の限り叩きつけ、命の限り許せない。

鉱害の広き証を示さんとかなわぬ手にて書くぞもどかし
萎えし手をそっと花瓶に近づけどなぜに匂はぬ菊の薫りは
薄暗きわが試歩廊を只一人引きずりゆけば夕やみ迫り
しびれ手に歌一つ書き腹立ちてベッドに臥せば煮たぎる涙
松葉杖つきてはるばる夢の国並ぶ仏に束のまの逢瀬
おくれ毛に白の混りて幾歳よとどく限りを左手で染む
いえぬ身に何ひと事も告げず去る医師の白衣の冷たき白さ
もの言わぬ遺影の前にこごまりて合わさらぬ掌に室の冷たし
霧深く鵙の一声けたたまし迫力ありて我が気性に似つ
ままならぬ体起こしてくしけずる万年二十歳の手に指輪なし
梅の香も未だ匂わぬ春浅く朝膳運ぶ手に力なし
(佐藤アヤ著「いのちのかぎりー萎えし右手に筆をくくりてー」より)

佐藤アヤ著「いのちのかぎり」