Part2 土呂久鉱毒史

伝承 夢買い山弥

 むかし、豊後の府内に山弥という商人がおった。ある日、山弥は日向へ行商にでかけた。峠で日向から来た男と出会い、世間話をしているうちにその男は眠ってしもた。不思議なことに、眠った男の鼻から蜂が飛び出して遠くの山へ飛んでいった。しばらくして戻ってきた蜂の足にキラキラ輝く銀粉がついておる。びっくりして見ていると、蜂は男の鼻の穴にもぐりこんでいった。やがて目をさました男は「夢を見たぞ。大きな岩かげにギラギラとまばゆいばかりに銀が噴きだしておる夢じゃった」と言うた。喜んだ山弥は「ぜひ、その夢をわしに売ってくれ」と頼んだ。「夢なんぞ何にもなりはせん。馬鹿なことをいう」と笑いながら、男は山弥に夢を売ることにした。山弥は行商の品物を全部男に渡し、代わりに男から夢の中で銀の輝いていた場所を詳しく聞いた。来る日も来る日も山弥は山の中を歩いて回り、とうとう男から聞いた場所をさがしだし、ツルを打ち込んで豊かな銀の鉱脈を掘り当てた。
 こうして土呂久かな山が始まった。
 銀山で大儲けした山弥は、やがて西国一の大長者にのしあがり、府内に大きな屋敷を構えた。府内から土呂久まで千両箱をならべて、その上をぽんぽん跳びながら、銀山に通うたげな。 (土呂久の古老から採話)

大分市に残る山弥の屋敷