Part1 発掘された公害病

やわ肌に煙を吸うたのが悪かった

患者の胸に刻まれた黒い斑点

 子どものころ鉱山の長屋に住んどりました。煙のたつ日は、お父さんやお母さんが「今日は外に出るな。喉に悪い、目に悪い」ち言いよりました。鉱山の周囲の人は、ほとんど目はただれ、咳がでよりましたからね。12歳のときに、千メートル離れたところに移転したけど、やっぱり咳は激しゅうしてですね。やわ肌に煙を吸うたのがいちばん悪かったそうです。
 鉱山に行って、お母さんのまねして鉱石の粉を足で踏んだりすると、よう怒られました。働いた人の手とか足に、こぶこぶができよったですからね。私にもこぶこぶができましたが、いまは三つ四つしかありません。鉱山がやんで、煙を吸わんようになったら、いつとはなしに手足のこぶこぶはなくなっていきました。
 よそから来た人から、こんな空気のよいところでそんなことがあったとですか、ち聞かれます。当時は、牛馬が痩せて、咳をして、飼料を食べんようになって死ぬる。土呂久の牛馬は死亡率が高いので、家畜保険に入れてもらえん。梅も柿もカボスもならん。蜜蜂まで姿を消しました。県に申し出ても、産業が発展すれば町や県に利益があるものですき、全然とりあげちゃくれんとです。
(佐藤鶴江さんの話)