「記憶」時の流れにはあらがえない、老いにもあらがえない、それでも、忘れてはならないことがある

  • Part1 発掘された公害病
  • Part2 土呂久鉱毒史
  • Part3 人権回復の闘い
  • Part4 慢性砒素中毒症
  • Part5 土呂久を語り継ぐ

はじめに

砒素は熱く煮えたぎるマグマにふくまれる微量元素のひとつである。火山、温泉、鉱山などで、地球の内部から地表に噴き出してきた砒素は、風や水に運ばれて、あまねく地球上に分布している。

人類が誕生する前から砒素は地球上に存在した。砒素は体内にはいると、酵素の活動を阻害して健康に害をおよぼす。人は砒素と共存するために、体内にはいった砒素を無毒化する機能を備えている。大量の砒素を摂取したとき、この機能は働かなくなって砒素中毒にかかる。

世界には、多数の砒素中毒患者が発生した土地がある。そうした場所に行ってみると、人と砒素の共存関係をこわしたのが、砒素ではなくて人間であることを知らされる。

さあ、砒素公害(砒素汚染)の土地を訪ねて、われわれの文明のありようを見つめなおしてみよう。